女性差別や性被害に抵抗するために、陵辱ゲームの法規制にも反対する

人権侵害と差別の定義については
法の文脈における「人権侵害」について - 雑記帳
↑のエントリを参考にします。

「陵辱ゲームはそれを恐れる女性に対する人権侵害だと思うか」

A.それが性犯罪によって
 作られた作品であるならば、
 被害にあった方に対する
 権利侵害であるとして
 被害者本人の訴えにより
 認められると考えます。


 それ以外の作品が
 陵辱を題材にしている
 という理由で
 個人への権利侵害として
 認められる事は支持しないと
 考えます。

「陵辱ゲームは女性全体への性差別風潮を助長する」という説を支持するか

A.助長するかもしれないし
 しないかもしれません。


 両方の可能性、
 どちらかというと
 助長する可能性はある
 と考えています。


 ですが助長する可能性自体は
 陵辱ゲームに限らず、
 純愛を題材にした非ポルノや
 女性向のポルノにも
 充分あり得ると思います。

「陵辱ゲームは女性全体への性差別風潮を助長するので、人権侵害/権利侵害である」という説を支持するか

「陵辱ゲームの流通は公権力でコントロールされるべき」という説を支持するか

A. 支持しません。


まず、「性差別風潮を助長する」で言えば、
私は「純愛」を謳うポルノではない作品には
「女性は性的に自主的な存在であってはならない」
という黙認されたルールを感じます。

1. 「かんなぎ」処女信仰者騒動

昨年「かんなぎ」という
作品について
起こった騒動ですが
「ヒロインには過去に交際していた男性がいる可能性がある」
という理由で、
作者である
武梨えり氏に対しての
抗議行動が起こりました。


作者である
武梨氏の単行本を破り壊して
撮影した写真を
インターネットの
大手匿名掲示板に
公開する者が現れたり、
女性全般を指して

  • 「処女は汚れてないから価値がある」
  • 「どこかの男が使用済みにした 中古女に価値はない」

との発言をネットで公開する者も
少なくありませんでした。


↑の騒動が広まったのは
かんなぎ」という作品が
きっかけでしたが、
ネット上の「奇妙な処女信仰」は
騒動の5年ほど前から
既に存在しており、
かんなぎ」はその価値観を
正当化するきっかけでしか
なかった可能性もあり得ます。


また作者の武梨氏が
女性であった事も
彼らにとって騒動を正当化する
理由の一つだったようで
「女なんかにまともな作品が描けるわけがない」
という罵倒もありました。


ではこの作品は
女性全体に対する
差別を助長した作品として
規制されるのでしょうか。


そうであるならば
私はその規制に反対します。


なぜなら「処女」「中古」発言が
差別的発言と認定されたとしても、
今度は差別的な発言を行った
人間の意図や責任を
フィクション作品や作者に
還元することに
なってしまうからです。


そうなった場合、
「女性なのに、そのような性差別的な漫画を書いていたからだ」
という理由で
武梨氏は責められることとなり、
結果として被害を受けた作者が
加害者側の責任を
引き受けなければならない
という
あまりに理不尽な結果になり、
日本国家で
「女性」として扱われる
武梨氏個人の権利を
侵害することにも
なってしまいます。


また、本当に
「奇妙な処女信仰」の女性蔑視な
発言を行った者が
かんなぎ」の読者であったのか?
そして「かんなぎ」の影響によって
差別発言を行ったのか?
という問題点を精査するのは
内心の問題でもある以上
証明するのは困難だと考えます。


読者の中でも少数の人間が
大きく騒いだことで
読者でない多数の人間が
便乗し、
自覚的あるいは無自覚的に
女性蔑視な発言を行っている
可能性もあり得ます。


以上から、フィクション表現自体が
特定個人に対する
人権侵害ではないのに、
性差別的な表現である
もしくは性差別を助長する
という理由のみで
特定の作品が公的権力によって
規制されることに反対します。


また、この件に関して
「差別的なフィクション作品に関わった」
という理由で
武梨氏を被差別者から
除外して考えるという
判断を行われる場合には、
その方の仰る女性差別より
武梨氏個人の擁護を
尊重したいと思います。

2. レイプ表現作品を流通させた者が 性暴力の被害に遭った場合

今回問題となっている
「レイプレイ」以外にも、
男性向け女性向けに関わらず
レイプ表現描写のある
フィクション作品が
日本の市場に流通しています。


また携帯電話や
自分専用PC、
携帯ゲーム機などの
ウェブブラウザの普及により、
以前に比べて
個人でもフィクション作品を
公開することが
容易になっています。


今回問題となった
「レイプレイ」とは違う
文脈ではあるものの、
レイプ表現描写を含む
作品を公開している
個人は少なくありませんし、


男性向のカテゴリで
レイプ表現の含まれる作品を
発表している
女性も存在します。


もし、
その女性のうちの誰かが
直接的に性暴力の
被害を受けた場合もまた、
「差別的な風潮を助長したからだ」
という理由で
(上記の武梨氏の例で
考察した場合と同じように)
加害者の責任を問われることに
なるのでしょうか。


もしそうなった場合
かんなぎ」の例のように、

  • 加害者が被害者の(レイプ表現のある)作品を閲覧したかどうか
  • 閲覧したとして、本当にその作品から影響を受けての犯行だったのか

を精査するのは困難です。


その上、加害者側が
「被害者の作品によって
影響を受けて行動した。
性差別表現のある作品を
公開した相手にも責任がある」
などと弁明する事を
正当化する理由にも
なってしまいます。


そうなってしまうと
被害者に
告訴をためらわせてしまう
理由にもなりますし、


もしくは告訴しても
被害者として
認められなくなってしまう
可能性がありえます。


これは
性産業で働く女性や、
SNSや出会い系サイトで
面識のない男性と
面会した女性が
相手から騙され
性被害に遭わされた場合、


相手を告訴できない状況に
追い込まれたり、
誰にも相談できず
泣き寝入りするしかない状況に
追い込まれてしまうように、


また取り調べや裁判などで、
そういったサイトの利用や
性産業に
従事していた事について、
関係ないにも関わらず
本人の責任として
追及されるなどの
二次被害(セカンドレイプ)を
助長させてしまう件に
酷似していると思います。


そうなった場合、
性犯罪被害者の声が
表に出なくなることで
性犯罪そのものに対する
偏見や二次暴力を
助長する可能性や、


性被害に遭った人が
泣き寝入りするケースを
増加させてしまう可能性も
充分考えられます。


そうなれば
女性差別撤廃のために
行われる表現規制が、
結果として
女性差別自体を助長する
ことになりかねません。


ですから「かんなぎ」の時と
同じように、
フィクション陵辱ゲームに対しても
特定個人に対する
人権侵害ではないにもかかわらず、
性差別的な表現である
もしくは性差別を助長する
という理由のみで
その作品の表現や流通を
公的権力によって
規制することに反対します。


差別の問題を
今回のように
フィクション表現の法規制で
扱ってしまうことは、
差別の問題を
縮小化してしまうことにも
なると思います。


差別の問題は
社会制度や性教育によって
是正されるべきと私は思います。


レイプなどを誘発するかも
しれないのであれば
公権力には
性別を問わず性のことを
相談できる窓口や
避妊法の教育、
被害者支援の強化にこそ
力を注いでいただきたいです。
(もちろん対象は男女問わずです)

余談ですが

私もいつか
表現の自由だ」
という理由で
今回のような規制に
反対してみたいです。