陵辱ゲーム規制を支えているのは「正義」や「優しさ」だと思う

エロゲ規制で女叩いてるヤツちょっと来いでいただいた
id:NaokiTakahashiさんのコメントに対する返答です。

うーん、しかし、たとえば日本ユニセフ協会の言うことにそれなりの正当性を与えているのは、やっぱりマッキノンの提唱したような概念じゃないの?(集団としての女性の人権侵害ってやつ)
俺は誤解してました。日本ユニセフ協会は、リベラルな理屈を理解してないわけじゃない。目的のためなら無視できると考えてるだけだ。それを正当化しているのが、マッキノンの言うような理論では?
名目ではなく、大義名分であり思想的な基盤だと思う。ただ利用されただけとは言えない立場じゃないかな。
ラディカルフェミニズムの主流かどうかは知らんけど、影響力は強いんだなあと、地下猫さんと話してて再認識した。

(コメントの流れは元エントリで)


的外れ または何を今更な
回答だったら申し訳ないのですが…


私は(法)規制などの正当化に対して
お墨付きを与えているのが
マッキノンの理論だとは思わないです。


むしろ逆に足利冤罪事件で
当時取り調べに当たっていた警察官の
ブログが炎上した事件や、
次の日の日記で書いた
コピーしたR18ゲームを売っていた高校生が
女の子牧場されている事件のように
「ルールを破った奴(?)は粛正されるべきだ」
という私刑の正義漢/価値観が
支えているんだと思います。


で、その私刑(今回で言えば規制支持)
を支えているのが
マッキンノンの
「ポルノグラフィは人権侵害である」
という定義が主かと言えば
違うと思います。

もしかしたらここで誤解していたかもしれません。


私の言う
「『ポルノグラフィは人権侵害である』を支持している」
というのは

著者である村瀬ひろみはマッキノン支持に傾いているんだけど、さすがにこの主張をそのまま受け入れたりはしない(忘れてしまったチャイルド・アビューズを思い出そうとすれば、記憶回復療法を巡る馬鹿馬鹿しくも洒落にならない騒動の繰り返しだ)。その代わりにチャイルド・アビューズの意味を拡大する。
現代社会では子供もまたポルノグラフィに囲まれている。この場合のポルノグラフィは性行為の描写とはイコールではなく、少年漫画なども含まれる。その結果、子供はポルノグラフィから「性教育」を受けることになる。男性社会におけるポルノグラフィは、もちろん、女性を男性に支配され搾取されるものとして描く。であるからして、女子はポルノグラフィに傷つきながら、同時に男に都合の良い「性の技法」を覚えていくことになる。これがマッキノンの言うチャイルド・アビューズにあたるのではないか、というわけだ。

ポルノ消費者の女性は犠牲者であるという話 - 気狂いウサギ

という「見方」として 否定してないです、
という意味での支持であって、
地下猫さんとの争点であった
すべてのポルノがそのまま
「人権侵害である」という意味で
支持しているわけではありません。


たとえば先日のエントリに

実写アダルトビデオの撮影中に
モデル女性が何らかの犯罪被害に
遭った事件をどう思いますか

という感じ?(たぶん)の
コメントをいただいて、
(私はフィクションなら
レイプでも惨殺死体解体描写でも
笑えるくらい平気なんですが
実際の具体的な事件で
被害者の名前まで出てくるものだと
文字情報でも直視出来ないので
回答拒否しました)
消してしまったのですが


例えばその事件が
殺人または性犯罪だったと
(勝手に)仮定しての話になりますが。


撮影中にモデルに対する
性犯罪または
殺人事件事件が起こった
という理由で
実写アダルトビデオと
呼ばれるものすべての
販売自体を
規制するのは
道理が合わないですよね


むしろそういう
事件を未然に防ぐためには
販売・流通自体の規制ではなく、
出演者の権利や安全が
保障されることと
被害にあったときの
保護/支援を強化する事が
(申告のしやすさも含めて)
政府の介入として
重要だと私は思っています。


エロゲではないですけれど
けっこう昔に
TVアニメの声優さんが
枕営業させられていた事件が
ありましたが、
ああいった構造を
放置しておきながら
インパクトのある
「陵辱18金ゲーム」に対して
性差別の名目で
(もう既に児ポ法が題目ですが)
政府が介入を行うことのみで
差別にたいする
アクションを行ったと
結論づける事には
同意しませんし、


ポルノという
「表現」であるという
理由を持って
そのまま女性に対する
人権侵害だから
規制の是非を問う
という理屈にも同意しません。


ただ、この件に関しても
自由を主張している人も
規制を主張している人も
性差別の問題から目を背けたり
被差別者に対して
女性差別などあるわけない」
「ポルノが規制されれば性犯罪が増えるぞ」
と更なる抑圧を加えるのであれば
私は差別者だと批判します。
という立場です。


↑は
規制反対派だけへの
批判に
見えるかもしれませんが、
「性的な体を売り物にする
女は人間ではない」
という物言いをする人に
対しても
私は同じ理屈で批判します。
ですからマッキノンの
「すべてのポルノは女性への権利侵害である」
という主義そのものを
支持しているという
訳ではありません
という事です。


閑話休題


で、今回の(法)規制に関して
私刑の正義漢/価値観が
支えているのではないか
という話の続きですが、


(法)規制への動きを支えているのは、
マッキノンの
「すべてのポルノは女性への権利侵害である」
という価値観だけではなく
「綺麗な人間でいなくてはいけない」
という純潔(教育)思想だと思うんです。

  • 犯罪を犯した人間はつるし上げて当然だ
  • 逸脱した奴は自己責任なんだから罰を与えなければならない


こういった
「自分は人間でありたい」

「人間」とは――「日本人」であり、「男」であり、「中流程度以上」であり、「異性愛者」であり、「五体満足」であり、「潔癖」である、ということ。 この当たり前の基準こそが「匿名」であり、「マジョリティ」であり、「空気」であり、何よりも「自由」なのである

という価値観が
今回のポルノゲーム規制支持を
正当化しているのではないでしょうか。


本来の女性差別自体は
全く取り上げられていない
のに
陵辱ゲームを取り締まる事だけで
問題がないという事に
なってしまっている
という点も、
女性差別撤廃という「表現」が
「正しさ」の名目だけにしか
必要ないからだと思います。


また、擁護/規制派の人達の両方に
「性暴力被害者に
(性)暴力的なストーリーを
楽しめる人なんて
いるはずがないに
決まっている」
というお優しい思い込みによる
決めつけを前提にされる方が
少なくないことや、
(註:これは楽しむ人も
楽しまない人も
両方いるという前提を無視し、
一元的な思い込みだけで
決めつける事への批判です)


京都教育大学の学生達が
集団暴行をした事件などで
被害者の落ち度ばかりが
責められていた事
などから見える、

女という属性に対する
純潔処女幻想も
ポルノゲーム規制支持を
後押ししている要因だと
思います。


女に対する差別/蔑視と
潔癖な人間でありたいという
純潔主義が噛み合いやすい
からこそ、
Equality Nowの主張と
自民党の対策チームや
日本ユニセフ協会の主張は
とても相性がいいのではないでしょうか。


今回のレイプレイ規制や
ボーイズラブ漫画が理由となった
アイオワ州の漫画収集家逮捕事件、
そしてこれまで
日本で国内で行われてきた
フィクション表現に
対する規制や取り締まりは、

女性/児童に対する人権侵害だから

という理由で
支持されている訳ではなく

青少年(男性)の
健全な性指向であるべき
「正しい異性愛」を歪めるから
有害なのだ

という理由で支持されてると
思います。


最初はNaokiTakahashiさんの
仰る通りに
マッキノンから
距離があることを表明する
つもりだったんですが、
キャサリン・マッキノンの擁護を読んで
その必要はないのかなと
最終的に判断しました。


私のような者の意見は
規制に反対する人にとって
邪魔にしか
ならないのでしょうが、
今回のレイプレイ騒動も
色々と思う事が多かったので
書いています。


私自身の
ちっぽけなプライドの高さから
罪人扱いという印象を
押しつけた点については
申し訳ありませんでした。
改めてお詫び申し上げます。