性別受BLが正統(?)派から嫌われる理由 〜BLにヒロイン萌えは無いのか?〜
うわー
しばらく放置している間に何をどういう順序で書こうとしていたか忘れてしまっていたので、
書きかけだったこのエントリを仕上げてしまうことにします。
以前メモ書きした「女装男子とおとこの娘を分類してみる」に言及していただきました。
つれづれBL茶話 BLにおけるヒロイン属性萌え
さて、まず大前提ですが。
私がこのブログで使っている「おとこの娘」という言葉の意味は、(男性向で)他の人が使っている「男の娘」とは異なる意味合いで使っています。
おそらくですが「男の娘」という言葉を使う人は、その対象が“男”であり、その男が“女装”をすることに強いこだわりがあるのだと思います。
たとえば男性器があること、男性の自意識をもっていることなどが該当するのだと思われます(違ってたらすみません)。
逆に私が「おとこの娘*1」という言葉を使うときは、その対象(要するに受)が“男”ではないし、かといって完全な“女”でもないということを暗に主張しています。
両性具有というよりは、むしろ無性にあたる感じでしょうか。
これについての詳しくはまた後日。
BLにヒロイン萌えは無いのか?
さて、本題。
おとこの娘とはヒロイン属性のひとつなワケか、と思い、そうすると「性別受け」も「ヒロイン属性」と受け止めてもあながち間違ってるわけでもない……?と思ったのです。
(中略)
つまり、こういうことなんじゃないかと。
「この可愛い受けって、いいよね!萌える!」(ヒロイン属性萌え)
「でも、この受けって、男の必要あるの?女でもいいじゃん」(関係性萌え重視派)
語ってる萌えの、ジャンルというか着眼点がそもそも違ったんですね。
なので、モヤモヤするんだけど、説明がつかなかったんだなあ。
↑の例って、こう言い換えることもできると思うんです。
「この●●攻と可愛い受けの関係って、いいよね!萌える!」(関係性萌え重視派)
「でも、この受けって、男の必要あるの?女でもいいじゃん」(ヒロイン属性萌え)
つまり性別受BL萌えというのは、かわいいヒロインに対する萌えであるのと同時に、男×性別受の関係性萌えであるとも言えるし。
逆にBLというのは男×男の関係性萌えであると同時に、「男の必要がある受」というヒロイン属性萌えであると言えると思うのです。
私がBL(普通?のBLのことで、このブログで扱う作品は除きます)を楽しむ時って、決して関係性ばかりに萌えているんじゃないんですよね。
むしろ、ヒロイン属性萌えに因る部分がかなりある気がします。
自分のBLの愉しみ方 - 受の自由を奪って組み敷くのが楽しいです(^q^)
このブログではBLジャンルで言う性別受の作品ばかりを扱っていますが。
もともとは別腹で、性別受ではないBLも書いたり読んだりしてます。
フェイクと比喩を織り交ぜた一例を元に説明してみます。(もちろん、どちらにも乙女男子要素はありません)
- 受:野心があり上昇志向も強い自信家。プライドが高い。
- 攻:攻とはライバルっぽい関係で、受からは嫌われている。
このふたりの場合、普段からプライドの高い受のペースを崩させて、攻に主導権を握らせます。
この萌えはクール攻×強気受萌えとも言えますが、同時に「この強気な受が言いなりにされてるのっていいよね!萌える!」
というヒロイン属性萌えであるとも言えると思うんです。
というか、私がBLを愉しむときは、間違いなくこの「性別受けじゃない受」という属性の「ヒロイン」に対して確かに萌えています。
むしろ、その萌えを実現するために攻を使っている気も。
閉鎖されてしまったブサイトさんの文章の転載になるのですが、とてもわかりやすかったので。
社会学では説明しきれない、やおいまたはボーイズラヴの謎。 - elegantly cruel. @ d.hatena
リアルでは受にしかなれない*2彼女たちが、仮想的 (virtual) に攻の視点に立つことで受を攻め、ようやく「ジェンダー的男性性」を経験することができる。彼女たちはイニシアティヴが欲しかったのだ:ペニスをもつ者のみに許されている「挿入する」権利――挿入する側が、恋愛においてより主体的であることを意味する――を長年求めつづけていた彼女たちの事実上の (virtual) 勝利、それがやおいである。
やおいとは、女性がremoteにペニス*3を獲得するプロセスである。彼女たちは、攻の男のペニスを借りて、遠隔的に受の男のアヌスを犯している。
たしかこの方は、やおいとは自分が安全圏にいながら登場キャラクターを使って (virtual) な性行為を行えるリモコンである、というようなことを仰っていたような気がするのですが、
まさにそんな感じ。
自分が萌えている受(=男キャラ)を、同じ(仮想の)世界にいる攻キャラの思うままにさせる。
そうすることで、その受を自分が支配できるのと同時に、
自分の欲望の代弁者≒投影の対象である攻キャラも“自分で”コントロールできるようになるんだと思います。
というか、そうしなければコントロールができない&したくないからこそ、801に走っている(単体萌えでは満足できずに、関係性萌えにまで発展する)のではないかと思うんです。
性別受BLが正統派から嫌われる理由
本題です。
「BLは男同士だから萌えるのに、受けが女の子みたいだったら、意味がないんじゃないの?
女の子に置き換えが出来るような話だったら、最初から女の子でもいいのに」
なので、上記のような意見が出てくるときが、あるんですよ〜。
私は、そういう意見を見るたびに、「言ってることはわかるんだけど……」「それは何か違う……」と、モヤモヤした思いを味わってきたのでした。
この「BLは男同士だから萌えるのに、受けが女の子みたいだったら、意味がないんじゃないの?」というの問いかけには、
言葉通りの意味とは別に、批判の要素を少なからず含んでいると思います。
上で私は「受の自由を奪って組み敷くのが楽しいです(^q^)」書きました。
攻を使って受を自分の思いのままにコントロールすることが楽しいから、私はBLを楽しむのであって。
受をコントロールできない・・・というかする必要がないくらい最初から受が女々しいのは組み敷く楽しみもないし。
逆にこちらが受にコントロールされてしまう気がして気持ち悪くなるんだと思います。
前に書いたものですが、こんな感じ。
「女は体売れば金になるんだからいいよなー」とかうそぶく男性が毎日新聞問題をセクハラとして認識できない3つの理由と、少年ジャンプが女性向に偏る理由
たぶん男の人は逆に「自分が挿入する身体的・心理的快感」は挿入される側の女側も全く違わない(くらい気持ちいい)と思い込んでいるんだろうな、というのがわかった点でした。
正常位で挿入される女のポーズしてみたの書き込みやはてブコメントのほとんどが「女になりたくなった」なのはきっとこのせいなんでしょう。
すきでもない相手に触られる側の気持ち*4を想像できない、というのは【2ch】ニュース速報アワーズ:「スキンシップのつもり」 男性職員、同僚男性職員の太もも触るセクハラで減給処分…熊本県でも顕著で、
ほとんどの名無しさんが「手を触ったり、太ももに手を置くなどの行為程度でセクハラだと訴えるな」「自意識過剰、ホモなんじゃねえの」と被害者男性に対し非難しています。
このように男の人の頭の中では、触られる側の人間は触る側である自分達の想像通りの反応をすべきという暗黙のルールがあるように見えます。
余談ですが、私がヲトメ男子・女装男子に嫌悪を抱くのも、こういった男性特有の女に対する侮蔑的な視線を感じ取ってしまうからなんだと思いました*5。
↑でわかりにくかったらああ、昔にもどりたい Hの時に言われて萎える言葉をあわせて読んでみてください。
せっかく受を緊縛して自由を奪ったはずなのに、
実態は「受が望んだから従順に言うとおりにして喜ばせていた」じゃ悔しいじゃないですか!
ミイラ盗りがミイラになったようなものですよ!
(追記)原作のあざといものに反応したくないのも、
こういった「支配されたくない」気持ちからきているのだと思います。
ですから「BLは男同士だから萌えるのに」という言葉の裏には、
「受が(ちゃんと)男だから萌えるのに」という意味があるんだと思います。
そしてそれ故に、性別受と正統派は仲が悪いのではないかと思うのです。